大規模林道調査レポート

会津の大規模林道と、幻の博士トンネル

〜全通した会津坂下・新鶴区間と、未開通の新鶴・柳津区間。幻の博士トンネルを発見〜

訪問日:2009年11月中旬  掲載日:2010年1月20日

飯豊・桧枝岐線
大規模林道は昭和40年代後半、旧森林公団がスーパー林道に代わるものとして全国に計画した二車線舗装の高規格林道です。まさに高度成長期の申し子のような計画ですが、21世紀になっても森林公団は緑資源公団→緑資源機構→森林農地整備センターへと名称変更、大規模林道も緑幹線林道へと名前を変えて生き残り、現在は当初計画のほぼ半分まで進んでいるようです。

今回は会津地方の大規模林道「飯豊・桧枝岐線」の現況を調査してみることにしました。

大規模林道 「飯豊・桧枝岐線」は、山形県南部の飯豊町から福島県南部の桧枝岐にかけて、ほぼ福島県を縦断するように計画された、作りかけの長大な二車線舗装林道です。昭和49年着工。おおまかに分けると、3つの区間から成ります。
  区間名 役割、場所 現況
その1 ・飯豊区間
・一之木区間
山形県南部と福島県北部を大トンネルで結ぶ。 山形側は開通済み。
飯豊トンネルは既に貫通しており、徒歩での通り抜けは可能らしい。
福島側は工事中
その2 ・会津坂下・新鶴区間
・新鶴・柳津区間
(北・博士トンネル・南工区)
会津坂下R49旧道から南下し、博士山付近まで。
会津坂下・新鶴区間は開通すみ。
新鶴・柳津区間は3工区に別れて工事。うち真ん中の博士トンネル工区は通行可能の快走路、だが前後は狭路に接続しアクセスに難あり。
その3 ・館岩・桧枝岐区間 国道352号線の南の山側を走る。 完成済み。交通量は僅かだが、一応普通に使われている。観光地桧枝岐へのアクセス路の一つ。

その1については、まだ暫く工事中なので、もし完成したら通行してみようと思っています。
その3については完成済みですが、既にツーリングマップなどにも掲載されていてスタンダードな存在となっているため、ここでの紹介は割愛します。

問題はその2の「会津坂下・新鶴区間」です。衛星画像などを見るとどうやら開通していそうなのですが、マップルには未掲載で、起点終点が不明です。

今回はこの、その2「会津坂下・新鶴区間」「新鶴・柳津区間」を探索しに出掛けました。
会津坂下・新鶴区間  
 
より大きな地図で 南会津の大規模林道 飯豊・桧枝岐線 を表示
会津坂下・新鶴区間を探索するにあたって、最大の課題は始点・終点が分からないということでした。

あまりに長くなるので省略しますが、昨晩からさんざん探索しまして目星をつけ、やって来たのはR49七折トンネルの東側の入口。この脇に旧国道があります。
廃れた旧国道峠の例にもれず、潰れたラブホテルが数件並ぶありがちな風景。ほとんど車は通りません。

少し進むと、七折峠の手前でおなじみの看板が見えてきました。大規模林道入口です。
左折して数百メートル行くと、一旦県道に突き当たります。左に行くとすぐに行き止まり。右に行くと数百メートルで・・・
大規模林道の続きがありました。とりあえず青看に注意して進めば道はトレース出来ます。
緑資源幹線林道、飯豊・桧枝岐線
会津坂下・新鶴区間とあります。
ひっそりと二車線快走路はありました。地元の方でも、この道を知らない人は多いんじゃないでしょうか。
暫く南下すると、会津広域農道(愛称:会津パールライン:二車線舗装路)に突き当たりました。右折して広域農道を50メートル程北進するとすぐに・・・
左側に大規模林道の看板がありました。
「会津坂下・新鶴区間」の続きです。
この道がまた凄いです。全然人家の無い山奥を、真新しい舗装でウネウネと進みます。尾根筋を進むので見晴らしも良く、快走路と言って良いと思います。
なんか、誰も居ないし。こんな場所に居ていいのか、だんだん不安になってきました。
舗装やセンターラインこそ新しめですが、落ち葉が均一に積もって、通行量無いのが一目瞭然です。えっと、私が今日一台目の車両でしょうか?
このまま進んで大丈夫なんでしょうか??

見通すと、道は山肌を縫って続いていました。
舗装路なのに、誰も通らない新設の道。ダート林道で十分なような気が・・・。

熊とか出たらどうしよう・・・。恐えー。
やっと終点まで来ました。県道59/53号線に突き当たります。この県道は両方とも極狭区間があり、改良工事を頻繁にやっていますので、あまり走らない方がいいかもしれません。
(あと何年かしたら、改良工事が終了して快走路になる可能性があります)
新鶴・柳津区間 北工区(未完成)  
さて、お次は新鶴・柳津区間です。

先程の交差点から県道53号を1km程東進すると、立体交差の下に大規模林道が見えました。上を通っているのが県道53/59号線、下を通っているのが大規模林道です。
新鶴・柳津区間の北工区(仮称)です。昭和50年代の着工でしょうから、恐らくこの辺りは完成して2、30年経つのでしょう。アスファルト表面は車が通らないせいか何となく埃っぽいです。センターラインも既に消えてしまっています。

もしあと数十年後に全線開通するとしても、その頃には最初に作った部分が廃道になってしまいそう・・・。投入されている金額を考えると、ちょっと笑えません。
最近、車が通った形跡がありません。何なんだこの道は?
ズンズン登って、見晴らしもいいです。このまま何処かに抜けられたら凄いなと思いつつ走っていたのですが・・・
やっぱり、道は唐突に途切れていました。工事を継続する気がないような、そんな途切れ方です。(右側に荒れたダート林道が続く)

但し、「新鶴・柳津区間」は3工区に別れて工事が進んでいる模様です。他の2工区を探索してみることにしました。
新鶴・柳津区間 南工区(仮称)  
県道53号に入ったら極狭路で参りました。結局一旦会津広域農道(会津パールライン)に戻り、県道32号線を東進して探索に向かいました。
県道32号線の長大トンネルを超えた先に南工区を発見。でも車両通行止めになっています。
ちょっと覗いてみると・・・、最近舗装したばかりの路面が山奥に伸びていました。工事の邪魔をしては悪いのでUターン。南工区は未供用でした。

とりあえず北からアプローチしても、南からアプローチしても通行止なのは判明しました。

では、中間地点にアプローチしてみましょう。
新鶴・柳津区間 中央工区(博士トンネル区間)  
実は前日も夜まで散々走って探索しておりまして、アプローチ道路として使えそうな林道の目星はつけてあります。
「林道 漆峠線」です。

昼間の状態がこの写真です。左側の青い看板に注目してください。
「←つむじ倉滝入口」
「博士山登山口この先50m左折」

実は正解は「博士峠登山口この先50m左折」だったのですが、この時は知る由もありません。
つむじ倉滝入口の看板を頼りに林道漆峠線へGO!

ううっ、何か全然人の気配がありません。落ち葉が積もったスリッピーな路面にビクビク。
熊が出たらどうしよう。
滑って谷底に転落したらどうしよう。
不安一杯で進みます。
標高が高くなってきました。展望が開けると、ちょっと安心します。
途中、つむじ倉滝を望む東屋がありました。人の気配が全然なく怖かったです。
漆峠線を20分ほど登り、そろそろ山頂付近かと思い始めた頃、突然二車線舗装路に出ました。
新鶴・柳津区間 中央工区(博士トンネル区間)(仮称)です。

山の上に、いきなりこんな立派な道が出現したので、予想していたとはいえビックリしました。結構白線も新しい感じ。つい最近出来た道なんでしょうね。
大トンネルもありました。博士トンネルです。たまに林業関係者や山菜採りの方、博士山を目指す登山者が利用するだけ。
ほとんど人も車も通らない、長大なトンネルが、山奥にひっそり佇んでいました。
なんか不思議です。幻の大トンネルと言っていいんじゃないでしょうか。
2005年3月、独立行政法人緑資源機構。いやしかし、この組織は本当に、すごい山奥に立派な道路を作りますね。

新鶴・柳津区間 博士トンネル付近
高規格の山岳ハイウェイが、人知れず博士山北斜面の山頂直下にポツンと取り残されていました。
果たして、この道が活用される日は来るのでしょうか・・・・。
トンネルを過ぎて暫く南下すると、やっぱり行き止まりになりました。直進すると、先程侵入禁止だった南工区に接続すると思われます。右側に迂回路が伸びています。1.2〜1.4車線程度の舗装路です。
迂回路を15分ほど下ると、人家が現れ、先程の「博士山登山口50m先左折」の交差点に出ました。一周してきたみたいです。
写真の軽トラが入っていく路地が、博士山登山口への道、そしてこの大規模林道へのアプローチルートとなります。

恐らく、ここから重機などを搬入して、林道工事を行ったのでしょう。ちょっと分りにくいです。
Uターンして、逆側の終点を確かめてみることにしました。
驚いたのが、延々と二車線快走ワインディングがつづくこと。走っても走っても、全然終りが見えてきません。
ちょっ、まだ続くのかよ!この道スゲー。日本有数の大規模ワインディングが、山奥に隠れているとは・・・。
眼下に街が見えてきました。なにしろ地図に載ってない道なので、どこを走っているのか?どこの街が見えているのかサッパリ分かりません。ただただ延々とワインディングロードが続いていました。
林道らしく、林業されている方を見かけました。ていうか久々に人を見ましたw。やっぱり人の気配があるとホットします。

しかしこんなキャタピラー付きのトラックで木を運び出すんですね。これなら急勾配のブル道(ブルトーザーが通れるよう簡易的に作った道)でも通れます。
散々走りまくって終点に到着。やっぱり唐突に道は途切れていました。計画では北区間と繋がることになっているハズですが、どうも暫く工事する気配は無さそうです。(写真右側に降りる荒れた林道あり)

緑資源機構も廃止されてしまいましたし、このまま、この道は荒れ果て、朽ちていってしまうのでしょうか?
行き止まり箇所から少し引き返すと、先程と同じように集落へと下る細い舗装路が伸びていました。暫く急坂を下ると、国道401号線に出ました。

写真がその地点で、大岩観音の標識が目印となりますが、こちらから入ると分岐が多いので、アプローチは難しそうです。
国道401号線  
国道401号線で只見に出ることにしました。博士峠付近は素朴な1.5車線の舗装路です。割と好きです。
昭和村で国道400号線にチェンジ、金山経由で只見を目指しました。
金山町の温泉 玉梨温泉「せせらぎ荘」  
R400走っていたら、対岸に物凄く鄙びた日帰り温泉を発見。入ってみることにしました。
(この辺りは無料の共同湯も多く、すぐ近くに川沿い露天風呂もあります。個人的には無料で観光用ではない地元専用みたいな湯はどうも気が引けてしまうので、営業しているせせらぎ荘に入ってみました)
いやー昭和の香りがして、凄く懐かしい感じがしますね。料金は250円。食事も出来て料金も格安です。夜は地元の方で混むのでしょうが、昼間のためかお客は私一人でした。

施設が古くてオンボロ(失礼)なので家族や団体で人を連れてきたら大不評でしょうし、カップルで来たら分かれるかもwしれませんが、気取らない一人旅や、鄙びた温泉好きのみの少人数ツーリングには便利な場所じゃないでしょうか。
鉄分、ミネラル分が豊富そうなかけ流しの湯が、浴槽から溢れていました。凄く気持ちの良い入浴が出来ました。
手描きの成分表って珍しいですね。昭和30年代にタイムスリップした気分です。
R252 六十里越 雪割り街道  
帰りはR252雪割り街道で六十里越えをして新潟に出ることにしました。(R352は既に冬季通行止めでした)
晩秋で少し寂しいですが、気持ち良く走れる道が続きます。やっぱ雪割り街道は良いです。

・・・・・

てなわけで、今回のレポは、会津には知られざるこんな道もあるんだよってお話でした。会津が初めてだったら、こんなマイナールートはオススメしないですけど、もう会津のメジャーポイントは行き尽くした、なんて方は大規模林道を探索してみてはいかがでしょうか。探索自体を楽しむつもりで走れば、結構楽しめると思います。但し、出来れば複数人で行動した方がいいかもしれません。熊が出るかもしれませんからネ。

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