ミニレポート 掲載2006.11.9

姫川渓谷とR148旧道とヒスイ峡

〜シリーズ R148糸魚川街道を行く〜

大峰峠を下っていくと、突然巨大な岩山が現れた。
大迫力の岩山、聞いてないよー、こんな凄いのあるなんて・・・。

手前は高浪の池、天然の池である。穏やかな高原風景と、険しい明星山のコントラストが印象的。

国界橋
白馬の街を過ぎると、国道148号線は日本海に向けて長い下りに入る。まるで地底に降りていくように、ひたすら下り続けるのだ。
今は連続するトンネルとスノーシェッドで日本海へと到達してしまうが、一昔前までは急峻な渓谷沿いをつづら折れを繰り返しながら走る道だった。

山腹に赤いスノーシェッドが見えるのが判るだろうか。昔はあんなところを走る道だったのだ。最近は正直言って少しつまらなくなった。

今日は旧道の跡をたどってみることにしようと思う。

道の駅小谷を過ぎてトンネルを2つ通過し、ちょうど長野県と新潟県の県境となる辺りに大崩落の跡がある。道の両側には駐車場が整備され、災害の慰霊碑が立つ。

振り返って見上げると、急峻なV字谷に掛けられた赤いアーチ橋と、崖の中腹に埋め込まれたようなスノーシェッドが見える。旧国道148号線だ。

長野県と新潟県の県境にかかる橋の名は、国界橋。竣工は何と昭和12年である。凄い所に橋を掛け、凄いところに道を掘った?ものだ。前々からこの光景が気になっていたのだが・・・

上の2枚の写真は、3年前の春に撮影したものである。この時は冬期間通行止めで行けなかった。

実は今回は3年越しのトライなのである。が、今回は冬でもないのに「通行止め」となっていた。でもまあ行ってみますか・・・自己責任で。

怒られたら嫌だなあと思いつつ、ひと気の無い道を進む。路面はきれいだが、夏草が張り出して道を覆いつつある。あと何年かすると道は無くなってしまうのだろうか・・・。

登りつめると、休止した信号が残っていた。廃道なら真っ先に撤去されるはず。復活する予定があるのだろうか?

左折するとすぐに橋が姿を現した。ちょっと寂しげ。自分は廃道系の人では無いので、一瞬進むのを躊躇する。

まあ昔は大型トラックがバンバン走っていた訳で、バイク一台通ったところで何の影響もないだろう。

それにしても、凄い直角カーブだ。大型トラックが道幅一杯使ってやっと曲がれる感じ。そうそう、昔はこんな道だった。

こんな崖の途中にどうやって道を造ったのか・・・、人間って凄いなぁと感じずにはいられない。でも、このエリアの地形の変動は人知の及ばないところでもある。
橋の上からは、新国界橋と、その向こうに大崩落地点を望むことが出来る。新国界橋は建設から8ヶ月にして平成7年の豪雨災害で完全に完全に流出しており、新しく掛け直されている。(人的災害は復旧作業中に起きている)。

姫川流域は今だ地形の改変が著しい地域なのである。恐らく日本で最も・・・、いや世界で最も地形の改変が進もうとしているエリアかもしれない。今回、わざわざ通行止めの旧道にこだわるのは、それを知っておこうという意味もある。

橋の先は強固なスノーシェッドが続いていた。

だれも通らない、時が止まったような風景。暫らく佇んでしまった。

葛葉峠
新潟県側は更に標高を挙げて葛葉峠へと続くのだが、今回は法面工事中通行止めとなっていた。工事の人と鉢合わせるとバツが悪いので行かなかったが、道が唐突に消えて復旧不可能なほど崩落しているらしい。
一旦新道に下りてトンネルをくぐり、逆側から通告止めの葛葉峠に登ってみる事にした。それにしても長いトンネル。地底へと進んでいるようにしか思えない。
葛葉峠の下を通る大所トンネルを抜けると姫川温泉だ。豪雨災害で壊滅的な打撃をうけ、その後復旧したものの、廃業した旅館が目に付く。廃業だけならいいが、倒壊しているホテルもある。豪雪地帯の厳しさというのもあるのだろうが、雪を考慮していない浅はかな設計にも原因があるようだ。
看板を見ると、「白馬温泉の先当分の間通行止め」とある。

とりあえず通行止め地点まで進んでみよう。

つづら折れの坂道を登っていく。さすが旧国道だけあって、道幅は広く走りやすい。ただ工事のダンプがやたら多かった。
途中には天然記念物のトチノキがあった。名称をボッカトチノキという。ボッカとは歩荷のことらしい。昔はこの峠を荷を背負って越えていったのだろう。
振り返ると、先ほどまで居た川岸は遥か下。トンネルだと1,2分で通過してしまう距離なのだが、旧道では随分標高差のある峠を上り下りしなけらばならなかったことが判る。
峠付近にはドライブインの残骸や、温泉旅館が残っていた。白馬温泉は白馬大仏で有名だったが、現在は休業中のようだ。写真の民宿も人は住んでいるようだが、営業は休止しているようである。昔は栄えたのだろうけど。災害の影響もあるが、新道が出来て交通の流れが変ったのが衰退に拍車をかけているようだ。翻弄された人生が窺えて、物悲しい。
峠を越えるとすぐ通行止めのバリケードがあった。
バリケードの先には、使われなくなって久しい道が続いていた。ここでUターン。
つづら折れを繰り返して下っていく。印象的な風景が続く。昔の国道148は、こんな道だった。いかにも沢山走ったなあと思わせる道だった。

だんだん、道が素っ気無くなっていく・・・。住人にとってはいいことかもしれないが、旅人にとっては旅の醍醐味が少しずつ失われてしまっているようで、少し寂しい。

PART2へと続きます。

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